保存水は2週間分ある。でもその先、水が手に入らなくなったらどうする?
結論から言うと、携帯用浄水器を1台持っておくべきです。
川の水を飲み水に変えられる手動式の浄水器があれば、水の不安はほぼなくなります。この記事では、実際に携帯用浄水器を購入した私が、選んだ理由と信頼できる製品の見分け方を解説します。ジチティのサイトでも防災備蓄の重要性について触れていますが、ここではさらに踏み込んだ水の確保手段を扱います。
保存水だけでは足りない理由
災害時に1人が1日に必要とする水の量は約3リットルです。これは飲料水と調理用を合わせた量で、農林水産省や内閣府の防災ガイドラインでも同じ数字が示されています。
2週間分を備蓄しようとすると42リットル。2リットルペットボトルで21本。1ヶ月分なら90リットル、45本です。一人暮らしのマンションで45本のペットボトルを置く場所を確保するのは、正直かなり厳しい。
しかも過去の大地震を振り返ると、断水が2週間で収まった例のほうが少ないのです。
| 災害名 | 断水戸数 | 復旧までの期間 |
|---|---|---|
| 東日本大震災(2011年) | 約257万戸 | 約97%が1ヶ月後に復旧。被害甚大地域は5〜6ヶ月 |
| 能登半島地震(2024年) | 最大約11万戸 | 約5ヶ月(一部地域は早期復旧困難) |
| 南海トラフ地震(想定) | 広範囲 | 9割復旧まで約42日。完全復旧は数ヶ月〜 |
出典:厚生労働省「東日本大震災水道施設被害状況調査」、日本経済新聞「能登半島地震、断水がほぼ解消」(2024年5月)、内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定」
能登半島地震では、断水が5ヶ月続いた地域があります。南海トラフ地震が起きれば、被災範囲の広さから能登以上に復旧が長引く可能性が高い。2週間分の保存水だけで乗り切れるとは、私にはどうしても思えませんでした。
なぜ「水を作れる手段」が必要なのか
保存水には物理的な限界があります。でも私が携帯浄水器を買った理由は、実はそこだけじゃありません。
本当に怖いのは、地震のような短期の災害ではなく、物資の供給そのものが長期間途絶えるシナリオです。
台湾海峡の緊張が高まれば、日本のシーレーン(海上交通路)が影響を受けます。日本は食料もエネルギーも大半を海上輸送に頼っている。もしこのルートが封鎖されたら、スーパーの棚から物が消えるのは時間の問題です。
パンデミックによる物流の停滞も同じ構造です。2020年のコロナ禍で、マスクやトイレットペーパーが消えた光景を覚えている人は多いでしょう。あれが水で起きたら、保存水の買い足しすらできなくなります。
短期の断水なら給水車が来る。でも長期の物資不足には、誰も助けに来ない。だから「水を保管する」だけでなく、「水を自分で作れる手段」を持っておきたかった。川の水を飲み水に変える携帯浄水器は、まさにその手段です。ジチティーのサイトでもこうした長期リスクについて詳しく解説しています。
住吉区には大和川がある
私が住んでいる大阪市住吉区には、南側に大和川が流れています。自宅から徒歩圏内に水源があるというのは、有事において大きな強みです。
大和川はかつて「日本一汚い一級河川」と呼ばれていました。国土交通省の調査で、平成17年から3年連続でワーストワンになったこともあります。
しかし現在は、下水道の整備や合併処理浄化槽の普及によって水質は大幅に改善しています。平成20年以降は本川8ヶ所の全測定地点でBOD(生物化学的酸素要求量)の環境基準を達成。平成22年と23年には「過去10年間で水質が大幅に改善された河川」で全国1位にもなりました。
もちろん、改善したとはいえ飲料水としてそのまま飲める水準ではありません。しかし0.1ミクロンの中空糸膜フィルターを搭載した携帯浄水器で濾過すれば、細菌や寄生虫を除去して飲料水として使うことが可能です。
大和川以外にも、雨水を貯めて濾過する方法や、風呂の残り湯を非常時に濾過するという選択肢もあります。水源が身近にあるという事実は、携帯浄水器の価値をさらに高めてくれます。
| 注意:携帯浄水器は細菌・寄生虫を除去できますが、化学物質・重金属・ウイルスは除去できない製品がほとんどです。河川水の浄水はあくまで緊急時の手段として考えてください。 |
出典:大阪府「もっとキレイに!大和川」、大和川清流復活ネットワーク「水質の現状」
私がSawyer Miniを選んだ理由
※筆者が実際に購入したSawyer Mini
数ある携帯浄水器の中で、私が最終的に選んだのはSawyer Mini(ソーヤー ミニ/SP128)です。理由は明確でした。
電気が不要。手で絞るだけで水を濾過できる完全手動式です。災害時は停電している前提で考えるべきなので、バッテリーや電源に依存しない点は絶対条件でした。
フィルター精度0.1ミクロン。中空糸膜フィルターの孔サイズは0.0001mmで、一般的な細菌(0.5〜1ミクロン)や寄生虫を通しません。除去率は99.99999%。米国環境保護局(EPA)の基準を上回り、国連でもその効果が認められています。
38万リットルろ過可能。1日10リットル使っても100年以上もつ計算です。実質的にフィルター交換が不要で、バックフラッシュ(逆洗浄)でメンテナンスすれば性能を維持できます。
アメリカのSawyer Products社は、世界70ヵ国以上で使われている浄水器メーカーです。各国の軍やNGO、登山家が実際に使っている実績がある。命に関わる道具だからこそ、無名メーカーではなく、実績のあるブランドを選びました。
フィルター本体の重量は約41g。手のひらに収まるサイズで、備蓄スペースも取りません。
ただし2026年2月時点で、Amazon日本での正規品の在庫は不安定な状況です。購入を考えている方は、UPI(正規代理店)や取扱アウトドアショップもチェックすることをおすすめします。
| 私がSawyer Miniを選んだ基準: ・電気がいらないこと(停電前提) ・実績のあるメーカーであること(命に関わる道具) ・フィルター精度が0.1ミクロン以上であること ・軽量で保管場所を取らないこと |
信頼できる浄水器の選び方
携帯浄水器を選ぶとき、Amazonのレビュー評価や価格だけで判断するのは危険です。これは「命を預ける道具」なので、見るべきポイントが決まっています。
フィルター精度を確認する
最も重要なのはフィルターの孔サイズです。0.1ミクロン(0.1μm)以上の精度があれば、細菌(大腸菌、コレラ菌など)や寄生虫(エキノコックス、ジアルジアなど)を物理的に除去できます。0.01ミクロンならさらに微細な汚染物質にも対応可能です。
電気不要であること
電動式の浄水器は流量が大きく便利ですが、バッテリーが切れたら使えません。災害時は充電できる保証がない。手動式を基本に考えるべきです。
メーカーの実績を調べる
何年やっているか。世界のどこで使われているか。軍やNGO、公的機関での採用実績はあるか。Amazonで安く売られている無名ブランドの浄水器は、スペックが本当かどうかも怪しい。命に関わる道具は、実績で選ぶべきです。
| 選ぶ基準 | なぜ重要か |
|---|---|
| フィルター精度0.1μm以上 | 細菌・寄生虫を確実に除去するための最低ライン |
| 電気不要(手動式) | 停電時に使えなければ防災用品として意味がない |
| メーカー実績 | 命に関わる道具。無名メーカーの自称スペックは信用できない |
| 第三者機関の検査済み | メーカーが自分で言っているだけでは不十分 |
| 交換フィルターの入手性 | 本体があってもフィルターが切れたら浄水できない |
私が調べて信頼できると判断した製品
以下は私が実際に調べ、メーカーの実績・第三者検査の有無・フィルター性能を基準に選んだ製品です。「ランキング」ではなく、防災用途で本当に命を預けられるかどうかという視点で判断しています。
Sawyer(ソーヤー)― 世界標準の信頼性
アメリカの老舗浄水器メーカーSawyer Products社の製品。主力モデルはSP128(ミニ)とSP2129(マイクロスクィーズ)です。
0.1ミクロンの中空糸膜フィルターで細菌・寄生虫を99.99999%除去。ろ過能力は38万リットルで、実質フィルター交換不要。世界70ヵ国以上で使用され、各国の軍やNGO、登山家から信頼されています。EPA(米国環境保護局)の基準もクリア。私が実際に持っているのもこの製品です。
フィルター重量は約41g。パウチ(水袋)を含めても約60gと超軽量。付属の注射器でバックフラッシュすればメンテナンスも簡単です。
日本ではUPI(正規代理店)が取り扱っています。Amazon日本での在庫は時期によって不安定ですが、UPIの公式オンラインショップや好日山荘などのアウトドアショップで購入可能です。
mizu-Q PLUS ― 日本製にこだわるなら
かりはな製作所が製造する日本製の携帯型浄水器です。2018年に国内特許を取得しています。
0.1ミクロンの中空糸膜に加えて、繊維状活性炭を搭載。細菌の除去だけでなく、カビ臭や塩素臭も取り除けるのが特徴です。市販のペットボトルに直接取り付けて使えるので、使い勝手は非常にシンプル。
カートリッジ1本で約350リットル浄水可能。本体重量は約65g。カートリッジは交換式で、別売りの替えカートリッジをストックしておけば長期間使えます。
価格帯は本体が約2,000〜4,000円前後、交換カートリッジが約2,000〜3,000円前後。Amazon、楽天、ヨドバシなどで購入できます。
KATADYN BeFree ― スイスの老舗
スイスで1928年に創業したKATADYN(カタダイン)社の携帯浄水器。創立者が化学者だったこともあり、科学的な浄水技術に強みがあります。世界各国の軍隊や公的機関でも採用実績あり。
BeFreeは0.1ミクロンの中空糸膜(ホロファイバー)フィルターを搭載。微生物を99.9%、バクテリアを99.9999%除去します。ハイドラパック社製のソフトフラスコと一体型で、持ち運びやすさは抜群です。
0.6Lモデルは重量わずか59g。浄化能力は約1,000リットル(0.6Lモデルの場合)。2017年にはバックパッカー誌「エディターズチョイス賞」やISPO AWARD「GOLD WINNER」を受賞しています。
価格は1.0Lモデルで約6,800円前後。2025年3月には活性炭フィルターを追加した新モデル「BeFree AC」も発売されています(0.5Lモデル:税込9,900円)。Amazon、スター商事(正規代理店)で購入可能です。
SAKUTTO(サクット)― テレビ紹介で話題
TBSテレビ「アイアム冒険少年」の脱出島企画で紹介されたことで知名度が上がった携帯浄水器です。日本企業のAPOLON JAPANが企画・開発を手がけています。
除去率は99.99999%を公称しており、国外1機関・日本国内2機関の計3ヶ所で品質・水質検査を実施しているとのこと。浄水能力は約5,000リットル、重量はわずか50gです。
手動式モデルが基本ですが、電動式モデルも販売されています。防災備蓄用途なら停電リスクを考えて手動式を選ぶべきです。
手動モデルの価格は約4,980円前後。Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングで購入できます。180日間のメーカー保証付き。
Greeshow GS-288 ― コスパ重視なら
Greeshow(グリーション)のGS-288は、8,000リットルのろ過能力を持つ携帯浄水器です。0.01ミクロンの中空糸膜フィルターを搭載し、除去率99.9999%を厚生労働省の水質検査機関で実証しています。
重量は約62g。日本国内のほとんどのペットボトル(28mm口径)に直接取り付けて使えます。緊急用ホイッスルと給水バッグが付属しているのも防災向きです。フィルター交換は不要(公称)。
価格は約3,980円前後と手頃。Amazon、楽天で購入可能です。電動モデル(GS-2801、GS-2811等)もありますが、バッテリー切れリスクを考えると防災用途には手動式のGS-288を推奨します。
交換フィルターの確認を忘れるな
浄水器本体を買って「これで安心」と思う人が多いのですが、見落としがちなのが交換フィルターの確保です。
フィルターには寿命があります。製品によって大きく異なるので、購入前に必ず確認してください。
| 製品名 | フィルター寿命 | 交換の要否 |
|---|---|---|
| Sawyer Mini | 約38万リットル | 実質交換不要(バックフラッシュで維持) |
| mizu-Q PLUS | 約350リットル | カートリッジ交換が必要 |
| KATADYN BeFree | 約1,000リットル | フィルター交換が必要 |
| SAKUTTO | 約5,000リットル | メーカー公称では交換不要 |
| Greeshow GS-288 | 約8,000リットル | メーカー公称では交換不要 |
特にmizu-Q PLUSは350リットルでカートリッジ交換が必要です。1日10リットル使えば約35日。長期戦を想定するなら、替えカートリッジを最低2〜3本ストックしておくべきです。
Sawyer Miniは38万リットルで実質交換不要ですが、バックフラッシュ用の注射器は消耗品です。予備を1つ持っておくと安心。
有事になってからフィルターを買おうとしても、売り切れている可能性が高い。買える今のうちにスペアを1つ確保しておく。これが備蓄の鉄則です。
| 注意:浄水器本体だけでなく、交換フィルターの入手性まで確認してから購入すること。有事にフィルターが手に入らなければ、本体があっても意味がない。 |
まとめ ― 水の備蓄は「量」と「手段」の両方
| 【結論】保存水だけに頼るな。水を作れる手段も備蓄しろ。
保存水:最初の2週間をしのぐための「量」の備え 両方あって初めて水の備えは万全。 浄水器を選ぶなら、電気不要・0.1ミクロン以上・実績あるメーカー。この3つを満たすものを選べば間違いない。 |
保存水のペットボトルを積み上げるだけでは、長期の有事に対応できません。携帯浄水器は数千円で買える「水を作る保険」です。
私は住吉区に住んでいて、徒歩圏内に大和川がある。だからこそ、浄水器を持っておく意味がある。川の水を飲み水に変えられるという事実は、それだけで安心感が違います。
まだ買えるうちに、1台。







