備蓄に米を選ぶところまでは決めた。でも白米と玄米、どっちがいいの?
結論から言うと、玄米一択です。
保存期間、栄養価、コスパ。どの角度から見ても、備蓄用の米として玄米が白米を上回ります。この記事では、実際に玄米を50kg備蓄している私が、データと実体験をもとにその理由を解説します。
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なぜ備蓄には白米でなく玄米なのか
スーパーで買う米は、ほとんどが白米です。白米は精米済みで、ぬか層と胚芽が取り除かれています。だから炊きやすいし、食べやすい。
でも、備蓄という目的で考えると、白米には致命的な弱点があります。
酸化が早い。
白米は精米した瞬間から酸化が始まります。米袋には通気口が開いているため、未開封でも劣化は進みます。常温保存では、夏場なら1ヶ月、冬場でも2ヶ月程度でおいしさが落ちていきます。半年もすれば、炊いたときにぬか臭さが出てくる。
一方、玄米はぬか層がバリアの役割を果たし、内部の白米部分を酸化や乾燥から守ってくれます。同じ保存条件で比較すると、玄米は白米より約1年長く品質を維持できるといわれています。
備蓄は「いつ必要になるかわからない」からこそ備えるもの。保存期間の長さは、そのまま安心の大きさです。
保存期間の比較 ― データで見る
玄米と白米の保存期間を、保存方法別に比較します。
| 保存方法 | 白米 | 玄米 |
|---|---|---|
| 通常の米袋(常温) | 約1〜2ヶ月 | 約1〜3ヶ月 |
| 通常の米袋(冷蔵) | 約1〜2ヶ月 | 約1年 |
| 真空パック(冷暗所20℃以下) | 約1年 | 約1年 |
| 真空パック(冷蔵) | 約2年 | 約2年 |
| 無酸素保存(脱酸素剤+密閉袋) | 約1〜2年 | 約3〜5年 |
| 栄養素 | 炭水化物中心 | ビタミンB群・食物繊維・ミネラル豊富 |
| 精米の必要性 | 不要 | 必要(精米機 or そのまま炊く) |
※保存期間は「おいしく食べられる目安」です。保存環境(温度・湿度)により変動します。
出典:備える.jp「お米を長期保存する方法」、米工房いわむろ「玄米の賞味期限」、たんぼや市河十三代「真空パックのお米の保存期間」
| ポイント:通常の米袋(冷蔵)で比較すると、白米が1〜2ヶ月に対して玄米は約1年。約6〜12倍の差があります。無酸素保存なら玄米は3〜5年の長期保存が可能です。備蓄向きなのは明らかです。 |
ただし注意点もあります。真空パックの場合、白米も玄米もほぼ同等の保存期間になります。差が出るのは通常保存や無酸素保存のとき。玄米のぬか層が酸化・乾燥のバリアとして機能するからです。
栄養面の違い ― 玄米だけで生きられるか
備蓄食として考えるとき、カロリーだけでなく栄養バランスも重要です。ここが玄米と白米で決定的に違います。
炊飯後100gあたりの栄養素比較
| 栄養素 | 玄米 | 白米 | 倍率 |
|---|---|---|---|
| ビタミンB1 | 0.16mg | 0.02mg | 約8倍 |
| 食物繊維 | 1.4g | 0.3g | 約4.7倍 |
| マグネシウム | 49mg | 7mg | 約7倍 |
| ビタミンB6 | 0.21mg | 0.02mg | 約10倍 |
| ビタミンE | 0.5mg | 微量 | ― |
| カロリー | 152kcal | 188kcal | 玄米の方が低い |
出典:文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
特に注目すべきはビタミンB1です。ビタミンB1は糖質をエネルギーに変換するために不可欠な栄養素。白米だけを食べ続けると、ビタミンB1が不足して「脚気(かっけ)」になるリスクがあります。江戸時代、白米を食べられるようになった都市部で脚気が流行し、「江戸わずらい」と呼ばれたのは有名な話です。
玄米なら、ビタミンB1を含めたビタミンB群、食物繊維、ミネラルが豊富。「玄米+塩+水」があれば、最低限の栄養を確保して生き延びることができます。
| 注意:玄米は栄養豊富ですが、完全栄養食ではありません。ビタミンA、ビタミンC、ビタミンDなどは含まれていません。あくまで「非常時に最低限の栄養を確保できる主食」として考えてください。平時はバランスの良い食事を心がけましょう。 |
玄米の注意点 ― 知らないと失敗する
玄米が備蓄に最適とはいえ、白米とは扱い方が違います。これを知らずに買うと「まずい」「炊けない」で挫折します。私も最初は失敗しました。
1. 炊き方が白米と違う
玄米は硬いぬか層に覆われているため、白米と同じ感覚で炊くと芯が残ります。コツは2つ。
- 浸水時間を長くとる:最低6時間、できれば12時間。夜寝る前に水に浸けて、翌朝炊くのが楽です。
- 水を多めにする:白米の1.2〜1.5倍の水量が目安。
2. 消化がやや悪い
ぬか層の食物繊維は消化しにくいため、よく噛む必要があります。一口30回を目安に。慣れないうちは胃もたれする人もいますが、2〜3週間で身体が慣れてきます。
3. フィチン酸の話
「玄米に含まれるフィチン酸がミネラルの吸収を阻害する」という話を聞いたことがあるかもしれません。
結論から言うと、通常の食生活なら心配不要です。
玄米に含まれるのは正確には「フィチン」という、フィチン酸にミネラルが結合した状態の物質です。すでにミネラルと結合しているため、体内で他の食品のミネラルを奪い取ることは基本的にありません。むしろ近年の研究では、フィチン酸の抗酸化作用や抗がん作用に注目が集まっています。
参考:玄米酵素「フィチン酸がミネラルの吸収を阻害するって本当ですか?」、日本植物生理学会「フィチン酸について」
4. 味の好みが分かれる
正直、白米のほうがおいしいと感じる人が多いです。これは慣れの問題でもありますが、どうしても苦手な人は次の章で紹介する「精米機」が解決策になります。
5. 圧力鍋で炊くとモチモチになる
普通の炊飯器でも「玄米モード」があれば炊けますが、圧力鍋で炊くと食感がまるで違います。モチモチになって、白米が苦手な人でも食べやすくなる。私はもっぱら圧力鍋派です。
家庭で精米するという選択肢
「保存は玄米のまま長期保存。食べるときは白米の食感で。」
これを実現するのが、家庭用精米機です。
精米機のメリット
- 備蓄は玄米のまま長期保存できる
- 食べる分だけ精米するので、常に精米したての鮮度
- 精米したての白米は、スーパーの白米とは別物のおいしさ
- 分づき米(3分、5分、7分)にすれば、栄養と食感のバランスを自分で調整できる
分づき米とは
| 精米度合い | 特徴 |
|---|---|
| 玄米(0分づき) | 栄養最大。硬い。浸水が必要。 |
| 3分づき | ぬか層を3割除去。ほぼ玄米に近い。 |
| 5分づき | ぬか層を半分除去。栄養と食べやすさのバランスが良い。 |
| 7分づき | ぬか層を7割除去。白米に近い食感で栄養もそこそこ残る。 |
| 白米(10分づき) | ぬか層を完全除去。食べやすいが栄養は炭水化物中心。 |
私のおすすめは5分づき。白米に近い食感で炊飯も簡単なのに、ビタミンB1や食物繊維がしっかり残っています。
精米機の選び方
| 家庭用精米機を選ぶポイント: ・価格帯は5,000円〜15,000円程度 ・一度に精米できる量は1〜5合が一般的 ・「かくはん式」は安価で手軽。「圧力式」は本格的な精米が可能 ・分づき対応モデルを選ぶと、好みに合わせて調整できる ・アイリスオーヤマ、タイガー、象印などから手頃なモデルが出ている |
保存方法のコツ ― 長持ちさせる5つのポイント
玄米を買ったら、そのまま米袋で放置するのはもったいない。ひと手間かけるだけで、保存期間が何倍にもなります。
1. 密閉容器に入れる
市販の米袋には通気口があるため、そのままでは酸化が進みます。ペットボトル、ジップロック、米びつなど、密閉できる容器に移し替えましょう。ペットボトルに入れる方法は、手軽で場所も取らないのでおすすめです。
2. 冷暗所に保管する
理想は温度15℃以下、湿度70%以下。直射日光と高温多湿を避けるだけで、劣化速度が大きく変わります。冷蔵庫の野菜室がベストですが、量が多いなら押入れやクローゼットの奥でも十分です。
3. 脱酸素剤を入れる
密閉容器に脱酸素剤を入れると、酸素濃度が0.1%以下になり、酸化・カビ・虫の発生を同時に防げます。14日間無酸素状態を保てば、虫の卵も死滅するというデータがあります。
4. 唐辛子を入れる
昔からの知恵ですが、唐辛子に含まれるカプサイシンには虫除け効果があります。米びつに数本入れておくだけ。脱酸素剤と併用すれば、さらに安心です。
5. 真空パックがベスト
家庭用の真空パック機を使えば、最も確実に長期保存できます。2〜3合ずつ小分けにして真空パックしておけば、使うときも便利。開封した分だけ食べて、残りはそのまま保存できます。
実際に50kg備蓄してみた
ここからは、私が実際に玄米50kgを備蓄した体験談です。
購入先と価格
2025年〜2026年現在、玄米30kgの相場はネット通販で約14,000円〜22,000円(銘柄・産地により変動)。2020年頃は30kgで7,000円前後で買えていたので、約2〜3倍に高騰しています。
参考:農林水産省「米の相対取引価格の推移」によると、主食用1等玄米60kgあたりの相対取引価格は、2020年産が約14,529円(30kg換算:約7,265円)、2024年産が約23,191円(30kg換算:約11,596円)。
保管場所
一人暮らしのマンションなので、収納スペースは限られています。私は押入れの下段を備蓄スペースにしています。30kg袋を1つと、残りは5kg×4袋に小分けして脱酸素剤と一緒にジップ付き袋へ。場所さえ確保すれば、一人暮らしでも50kgは十分保管できます。
ローリングストック法
備蓄した玄米は「買ったら放置」ではありません。古いものから食べて、食べた分だけ新しく買い足す。これがローリングストック法です。常に鮮度を保ちながら、備蓄量を維持できます。
| 全部を一度に買う必要はありません。 月に5kgずつ買い足していけば、10ヶ月で50kgに到達します。「今月は5kg」「来月も5kg」。この積み重ねで、気づけば1年分の備蓄が完成します。 |
米の価格はなぜ上がり続けるのか
「米が高い」。最近、誰もが感じていることだと思います。実際にデータを見ると、その深刻さがわかります。
米価格の推移(相対取引価格・60kgあたり)
| 年産 | 60kgあたり | 30kg換算(参考) |
|---|---|---|
| 2020年産 | 14,529円 | 約7,265円 |
| 2021年産 | 12,804円 | 約6,402円 |
| 2022年産 | 13,844円 | 約6,922円 |
| 2023年産 | 15,315円 | 約7,658円 |
| 2024年産 | 23,191円 | 約11,596円 |
出典:農林水産省「令和6年産米の相対取引価格・数量について」
2024年産は、1993年(平成の米騒動)以来の高値水準です。スーパーの店頭価格も、2025年4月時点で白米5kgが平均4,217円。前年の2,078円から約2倍に跳ね上がりました。
令和の米騒動(2024年8月)
2024年8月、全国のスーパーから米が消えました。
原因は複合的です。2023年の猛暑による不作、インバウンド需要の急増、1999年以降最低水準の在庫量。そこに8月8日の南海トラフ地震臨時情報が重なり、買いだめが殺到しました。スーパーの米販売量は前年比で最大48.6%増加し、棚は空っぽになりました。
構造的な問題
- 農家の高齢化と離農:基幹的農業従事者の平均年齢は約68歳。後継者不足で毎年農家が減り続けている
- 肥料・飼料の輸入依存:肥料原料のほとんどを輸入に頼っており、国際情勢の影響を直接受ける
- 減反政策の影響:長年の生産調整で、供給力自体が低下している
これらは短期的に解決する問題ではありません。つまり、「今買える値段が、一番安い可能性がある」のです。
まとめ ― 白米か玄米か迷ったら
| 【結論】備蓄するなら玄米一択保存期間:玄米の圧勝(通常保存で白米の6〜12倍、無酸素保存で3〜5年) 栄養価:玄米の圧勝(ビタミンB1は8倍、食物繊維は4.7倍、マグネシウムは7倍) 食べやすさ:白米が上(ただし精米機で解決できる) コスパ:玄米の方がやや安い(精米コスト不要・長期保存で廃棄リスク減) |
迷ったら玄米を買っておけば間違いありません。
どうしても白米の食感がいいなら、家庭用精米機を一台持っておけば解決します。保存は玄米のまま長期保存、食べるときだけ精米する。これが最強の備蓄スタイルです。
「備蓄なんて大げさだ」と思うかもしれません。でも2024年8月、スーパーの棚から米が消えたのは事実です。あのとき、備蓄があった人は何も困りませんでした。
まだ買えるうちに、まず5kgから。







